戦車兵

 

息子が言った 
「聞いてよ ママ
ぼく 戦車兵になりたいな
そしたら ぼく ファシストをさ、ママ
散り散りバラバラに 粉砕してやる」。

 

「そうねぇ、チビさん」母親は言った、
「奴らにガツンとくらわせなきゃね」

息子は答えた 
「そりゃそうさ、ママ、
ガツンとくらわせなきゃ。

大人にならなくちゃね、もちろん、
 敵に弾を食らわせるため。
 子供は待たなくちゃね、もちろん、
 ただ ぼく 待つなんてできないよ」。

「そうねぇ、私のお友だち」母親は言った、
「待たなくちゃ、待たなくちゃいけないわよ」

息子は 答えた
「そりゃそうさ、ママ、
だけど待つのはひどく難しいよね。

もし マルシャールが ぼくに 突然
『少年よ、何になりたい?』と聞いたら、
ぼく言うよ、『同志マルシャール、
ぼくは戦車兵にならなくてはなりません』って」

 


「そうね、私の坊や」 母親は言った、
「あなたは 戦車兵にならなくちゃ」
息子は答えた 
「そりゃそうさ、ママ、
 すぐにならなくちゃいけないんだよ。
 壕をとびこえて 僕らの戦車が
 ファシストの方へ 動き出すんだ・・・
 わかるでしょ、ママ、ファシストを打ちまかすため
 僕は いつでも、いつでも 準備は出来てるんだ」

母親は言った 
「敵を打ち負かすため
いつだって、坊や、準備しておくのよ」
息子は言った、
「もちろんだよ、ママ、
 僕は いつでも、いつでも 準備は出来てるんだ」

1938


「そうねぇ、坊や」母親はいう、

「あなたは 戦車兵にならなくちゃね」
息子は言った
「もちろんだよ ママ、
ぼく 戦車兵にならなくちゃ

ぼく知ってるんだから、ファシストが
 四方八方から迫ってること。
 やらせておいて、やってやるんだ・・・
 奴らにガツンとくらわせてやる」。



挿絵 河原朝生